憧れの槍ヶ岳ーその2

出発前に調べておいた槍ヶ岳の最低気温は槍ヶ岳山荘で前日の22日が零下だったから
それなりの寒さは覚悟していたけれど
この快晴の晩は寒かった。おかげで夜空の星がきれいだったが
朝起きてみるとテントのフライはバリバリに固まっていて外に出しておいた水が容器の中で凍っていた。
頂上から千三百メートルも下にあるテントサイトがまさかこの時季に零下まで気温が下がるとは予想外だった、寒いはずだ。

5時過ぎには出発する予定だったけれど寒くて、予定より1時間遅れて歩き始めた。
槍沢に沿って日陰を歩き大曲を過ぎるころから直射日光があたるようになった。
[:W360]
(真っ青な空の下を登る)
[:W360]
(ナナカマドの実は赤くなっていたけれど、紅葉にはまだ少し早かった)

天狗原分岐から上はガレ場をジグザグに登ってゆく。整備された道は歩きやすかった。
雲ひとつない空の下をはるか向こうの稜線を目指して歩くのは本当に久しぶりだ。
肩の小屋(槍ヶ岳山荘をこう呼ぶらしい)にはちょうど10時に着いた。

(ここまで来るとみんな笑顔になる)
一息入れてビールを飲みたいところだったが
本命の穂先には長い梯子と下りの鎖場がるあるので
酔って足を踏み外せば笑い者状態だろうから諦めた。

小屋前の長椅子に座ってから穂高の方を眺めると大喰岳の向こうに前穂、北穂、奥穂の頂が見えた。
富士山に並んで南アルプスの峰々、御嶽山乗鞍岳が見え、

視線を左に向けると常念岳や蝶ケ岳の向こうに八ヶ岳の峰々が並んで見えた。
手前の稜線のテントサイトは狭い岩場の中で
できればこんな高見でテントに泊まりたいが、もう背負い上げるのは無理だろう。

W夫妻は早々と穂先に登って残りの3人は十分すぎる休憩を取った後で頂上に登りだしたが
ゆっくり休憩を取りすぎた。すでに登りの渋滞状態に突入してしまった。
少し前なら30分で頂上、下りも15分程度だったのに、
登りに1時間以上、頂上で待機が15分以上、下りにまた時間がかかって往復に1時間半以上使ってしまった。
昼過ぎになると下から登ってくる登山者がどんどんと増えてきて
穂先から下りてきたときには頂上への登り待ちの登山者が小屋の前近くまで長蛇の列になっていた。
これだと往復3時間はかかるなと誰かが言っているのが聞こえた。

(頂上からみた槍ヶ岳山荘、巨大な山小屋だな、でも泊りが1畳に3人は耐えられない)
頂上からは笠ケ岳、鏡平小屋、双六、三俣蓮華、黒部五郎、鷲羽、水晶、薬師、立山、針ノ木、蓮華、鹿島槍、白馬、燕と今まで登った北アルプスすべての山がぐるりと360度の展望だった。
小槍の岩壁にはロッククライミングのパーティが貼りついていた。
名残惜しいが登った山は下りなければならない。

(幡隆窟から仰ぎ見る槍の穂先)
昨日の夜、あまりに寒かったから
2日目の夜はババ平の2連泊をやめて横尾か徳沢までくだってキャンプしたい。
一目散に下りてきたが膝がいうことをきかなくなり
テントサイトに戻ったのはすでに15時半過ぎになり
横尾にたどり着いた時には18時になってすっかり暗くなってしまった。
健脚のW夫妻は1時間あまりでババ平から横尾まで下ってしまったから
徳沢の草原のキャンプ場までゆきたかったようだけれど
鈍足の早期高齢者3人組を横尾のキャンプ場で待っていてくれた。
昨日の寒さで眠れなかったKuちゃんはテント泊をあきらめて横尾山荘に素泊まり(7000円は高いなあ)することになり
残る4人で夜は待望のテント場宴会だ。
ビールで乾杯し、厚切りベーコンを焼き、日本酒、ウイスキー・・・、ポリポリ、ごくごく、つまみを食べ食べ、
酒盛りしながら今日の山歩きを振り返るひととき、最高だなあ(至福の時)!!
ババ平ほど寒くはなかったので疲れた体にビールがとってもうまかった。
横尾の夜空も美しかった。心地よい酔いで何時に寝たのかは定かではないけれど夜はちょうどの暖かさでよく眠れた。
3日目の朝は6時過ぎに横尾を立ち、上高地に9時過ぎ、沢渡を10時に出発して、16時に自宅に着いた。
憧れの槍ヶ岳登山は好天と寒さと眺望と宴会が堪能できた思い出に残る山旅だった。
綺麗な写真もいっぱい撮れて満足だ。